

物流は、私たちの生活や経済活動を支える大切なインフラです。しかし現在、ドライバー不足が深刻化しており、このまま対策を講じなければ2030年には輸送能力が約34%不足するとも言われています。
こうした危機感を背景に改正されたのが、いわゆる「トラック適正化二法」です。今回の改正は、単なる規制強化ではなく、ドライバーの処遇改善や業界の健全化を通じて、物流を持続可能なものにしていくことを目的としています。
まず大きなポイントの一つが「許可の更新制度」の導入です。これまで一度取得すれば原則として継続できた事業許可が、今後は5年ごとの更新制となります。法令遵守や社会保険料の納付状況、適正な運賃収受などが確認され、基準を満たさなければ更新が認められない可能性もあります。これにより、法令を守り適正に運営している事業者が正当に評価される仕組みへと変わります。
次に注目すべきは「適正原価」を下回る運賃の制限です。燃料費や人件費、安全対策費など、事業を継続するために必要な費用を反映した“適正原価”が国により定められます。運送事業者だけでなく、発注側にもその遵守が求められる点が特徴です。過度な値下げ競争を防ぎ、ドライバーの賃金や労働環境を守るための重要な仕組みといえます。
また、再委託の回数にも制限が設けられます。元請をゼロ次とした場合、再々委託まで、つまり二次請けまでに抑えるよう努力義務が課されます。これにより、取引構造の透明化と責任の所在の明確化が図られます。
さらに、運送契約時の書面交付義務や「実運送体制管理簿」の作成義務も強化されます。一定重量以上の貨物については、どの事業者が実際に運送を担うのかを明確にし、その情報を1年間保存する必要があります。取引の見える化が進むことで、不透明な多重下請構造の是正につながることが期待されています。
そして、違法な「白トラ」への対策も強化されました。無許可運送を利用した荷主側にも罰則が及ぶ可能性があり、是正指導や勧告、公表の対象となります。発注者側にも責任が問われる時代へと変化しています。
今回の法改正は、単に規制を増やすものではなく、適正な取引環境を整備し、ドライバーの社会的・経済的地位を向上させることを目指したものです。物流を「安く使うもの」から「適正に支えるもの」へと意識を転換する大きな一歩といえるでしょう。
これからの物流業界は、法令遵守と透明性、そして働く人を大切にする姿勢がこれまで以上に求められます。今回の改正内容を正しく理解し、自社の体制を見直すことが、持続可能な物流への第一歩となります。